ハンディキャップ理論

     

下の写真は、グッピーという熱帯魚です。
大きく広がった尾びれに、鮮やかな模様が目を引きますね。

Melanochromis, Public domain, via Wikimedia Commons

でも、実はこの派手な尾びれは、生きていくうえで特に必要なものではありません。
むしろ目立ちすぎて、捕食者に見つかりやすくなるというリスクがあります。

それでも、なぜこんな姿をしているのかというと――
理由はただひとつ、「メスにモテたい」からです。

このように、異性へのアピールのために、生存には不利な特徴を進化させた生物はたくさんいます。


なぜメスは派手なオスを好むのか?

地味なオスと交尾した方が、目立たない子どもが生まれて生き延びやすいようにも思えます。
それなのに、なぜわざわざリスクの高い派手なオスを選ぶのでしょうか?

実は、グッピーのオスが綺麗な姿を保つのは簡単ではありません。
ケンカで負けたり、体調が悪かったり、泳ぎが下手だったりすると、すぐに尾びれはボロボロになってしまいます。

逆に言うと、派手な姿を保てる個体は、それだけで「健康で強い」という証明になるのです。
「こんなに不利な姿でも元気に生きている」ということが、優れた遺伝子を持っている証として、メスへのアピールになるわけです。

この考え方を「ハンディキャップ理論」と呼びます。

バトル漫画などで、強気なキャラが「お前など片手で十分だ」と言ってハンデをつける場面がありますが、それと似たようなものですね。
(男って、そういうところありますよね😅)


ハンディキャップ理論の例

代表的な例としてよく挙げられるのが「クジャク」です。
あの大きくて美しい尾羽根は、生活するうえではむしろ邪魔な存在でしょう。
それでも、それを綺麗に保てるのは優秀なオスだという証拠です。

Jebulon, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

カブトムシやクワガタにも、やりすぎなほど長いツノを持つ個体がいます。
敵と争うだけなら、そこまでの長さは必要ないはずですが、それでも進化したのは、強さを誇示するためと考えられています。

【ホソアカクワガタ】
keusju, Public domain, via Wikimedia Commons

恐竜たちにも、ハンディキャップ理論が当てはまりそうな例があります。

テリジノサウルスの長すぎる爪は、実用性よりも見た目のインパクトが重視された結果かもしれません。

そして最近話題のスピコメルスのトゲは、もう明らかに“やりすぎ”ですよね。

恐竜ではないですが、翼竜の中にもビックリするくらい大きなトサカを持った者たちがいます。

【翼竜 ニクトサウルス】
Jaime A. Headden (User:Qilong), CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

地味なオスを好むメスもいる?

ちょっと余談ですが――
実は、グッピーのメスの中には、あえて地味なオスを好む個体もいることが研究で分かっています。
特に捕食者が多い環境では、目立たないオスの方が選ばれる傾向が強くなるようです。

生物にも「好み」や「流行り」のようなものがあり、それによってさまざまなタイプの個体が生まれます。
これは「種の多様性」という、また別の重要な進化の仕組みにつながっていきます。

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