
「恐竜のはじまり」に興味があるなら、この恐竜は見逃せません。
ヘレラサウルスは、恐竜が地球に現れ始めたころに生きていた、最古級の肉食恐竜のひとつです。
そのため「原始のハンター」として、恐竜進化の謎を解くカギを握る存在とされています。

三畳紀の覇者
ヘレラサウルスが生きていたのは、約2億3,000万年前の三畳紀後期。
この時代、恐竜はまだ登場したばかりで、地球上では他の古い爬虫類たちが優勢でした。
そんな中で、ヘレラサウルスはすばやい動きと、鋭い歯やツメを武器にした有力な小型捕食者として、生態系の中で重要な位置にありました。
同時代の恐竜(例:エオラプトルやスタウリコサウルス)は全長1〜2メートル程度の小型種が多かった一方、ヘレラサウルスは最大で6メートル近くにまで成長でき、当時としてはかなり大型の肉食動物でした。
そのため、ヘレラサウルスは「恐竜が強力な捕食者へと進化していく道のりの先駆け」とされ、後に登場する大型肉食恐竜たちの“原型”となった存在とも言えるでしょう。
アゴの特徴と食性
ヘレラサウルスのアゴの骨は、他の初期の恐竜と比べてやや“ゆるく”つながっていて、スライド可能な構造(intra-mandibular joint)をしていました。
これにより強力な咬合力と柔軟な動きが可能になり、獲物に一気にかみつくのに有利だったと考えられています。
また、上アゴと下アゴのそれぞれに20本以上の歯が並んでおり、前と後ろでは歯の形が微妙に異なります(異歯性)。
これは、前歯でかみつき、後ろの歯で肉を切り裂くという、効率的な食べ方を可能にしていました。
このようにヘレラサウルスのアゴや歯は、やわらかい昆虫や動きの速い小動物、筋肉質な中型の獲物など、いろいろな獲物に対応できる構造になっていたと考えられています。
研究史
「ヘレラサウルス」という名前は、化石を発見したビクトル・ヘレラさんにちなんで名付けられました。
1959年、アルゼンチンのサンフアン州で最初の化石が見つかり、1963年に正式に命名されました。
その後1990年代に入り、古生物学者ポール・セレノ(Paul Sereno)らが同地域でより完全な全身骨格を発掘・記載し、ヘレラサウルスの解剖学的特徴や分類に大きな進展をもたらしました。
この研究により、ヘレラサウルスは「恐竜がどのように誕生し、進化していったのか」を探るうえで、極めて重要な存在であることが明らかになったのです。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- テタヌラ類
- ケラトサウルス類
- ヘレラサウルス科
-
ヘレラサウルス
-
- 竜脚形類
- 獣脚類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類