
カムイサウルスは、まさに“国産”の恐竜です。
2019年に正式に命名されたこの恐竜は、北海道で発見され、日本の恐竜研究を象徴する存在となりました。
その姿は「日本の竜」として、今後ますます注目されることでしょう。

特徴や生態について
カムイサウルスは「カモノハシ竜(ハドロサウルス科)」の仲間で、平たいくちばしのような口を持っていました。
この口の形は、水辺に生える植物をかき集めて食べるのに適しています。
首や胴体はがっしりとしており、前足と後ろ足の両方を使って歩いていたと考えられています。
(他のカモノハシ竜と同様に、二足歩行も可能だったようです)
長いしっぽでバランスをとりながら、森や湿地を移動していたと推測されています。
研究史
2004年、北海道むかわ町で、ある化石愛好家が奇妙な化石を発見しました。
最初はワニの化石だと思われましたが、形が少し変わっていたため、穂別博物館に寄贈されました。
博物館の館長はそれを「首長竜」の化石と判断し、館内の収蔵庫に保管されることになります。

Joyofmuseums, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
それから7年後──
その博物館に首長竜の専門家「佐藤たまき准教授」がやってきました。
恐竜に比べると首長竜はあまり人気がなく、多くが展示されず収蔵庫に保管されていることが多いのです。佐藤先生は、収蔵庫の化石目当てで全国の博物館を回っていたそうです。
そして、冒頭の化石に出会います。
クリーニング(化石に付着した石や土を取り除く作業)中に、「これは首長竜ではない」と気づいたのです。
ここから北海道大学の「小林快次准教授(現在は教授)」へ連絡が行き、のちに日本中の恐竜ファンが大興奮するストーリーに展開していきます。
化石を確認した小林准教授は「これは恐竜のしっぽ」と断言。
さらに発掘現場を確認し、まだ続きが埋まっていることを確認。そして「このまま掘り進めば、しっぽ以外の化石が出るはずだ」と予言しました。
当時の日本は海の底でした。
しかも、波の影響を受けないほど深い海だったのです。
そんな場所に、陸上で暮らしていた恐竜の尻尾だけがあるはずがない。
津波か何かで流された恐竜が、海の生物に食べられる前に海底のドロに埋もれ、そのまま化石になった可能性が高い。

そうなれば全身骨格が見つかる可能性もあります。
化石が見つかった北海道のむかわ町は、小林先生に説得されて総額6000万円の発掘費を用意。
小林先生をリーダーとして、北海道大学の学生や博物館の学芸員、ボランティアによる本格的な発掘が始まりました。
その結果──
なんと総体積の80%もの全身骨格が発掘されました。

これは日本で発見された化石としては最も完成度の高いものになります。
しかも、いろいろな特徴から「新属新種」の恐竜であることがわかりました。
全長8m、体高4m、ハドロサウルス科で「エドモンドサウルス」に近い恐竜です。
発掘現場から「むかわ竜」と名付けられ、「ダイナソー小林(小林快次先生のニックネーム)」の名とともに、日本中で大ニュースとなりました。
これが、のちに「カムイサウルス・ジャポニクス」という学名が付けられた恐竜の発見エピソードです。
恐竜時代の日本は海の底だったので、日本で恐竜の化石を見つけるのは難しいと思われていました。
しかし1億8600万年間も続いた恐竜時代の中で、太平洋に流された恐竜が今回のカムイサウルスだけなはずありません。そして流された恐竜が、潮流の関係で日本に辿り着く可能性があると証明されました。
つまり、今皆さんが立っている場所の地中深くに、恐竜の化石が横たわっている可能性があるということです!
いやぁ~!ワクワクしますね!!
分類
恐竜
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-
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