
映画『ジュラシック・パーク』で、「首のフリル」と「毒液を吐く恐竜」として登場し、強烈な印象を残したディロフォサウルス。
しかし、実際の姿は映画とは大きく異なっており、ファンの間では「誤解されがちな恐竜」として知られています。
頭に2枚のトサカを持ち、ジュラ紀初期を代表するスマートな肉食恐竜です。

襟巻きと毒について
ディロフォサウルスといえば、映画『ジュラシック・パーク』で描かれたような「襟巻き(フリル)を広げて毒を吐く恐竜」というイメージが根強くあります。
しかし、実際の化石からはフリルや毒腺の痕跡は発見されていません。
科学の世界では「存在しなかったこと」を完全に証明するのは難しいため、現時点では「そのような証拠は見つかっていない」というのが正確な表現です。
ちなみに、映画では恐竜のDNAに現代の動物の遺伝子を組み合わせて再生するという設定があるため、あのディロフォサウルスは「間違い」とは言えません。
むしろ、フィクションならではの自由な発想が、恐竜への関心を広げるきっかけにもなっています。
さらに近年では、シノルニトサウルスなど一部の獣脚類に毒を持っていた可能性があるという説も提唱されています。
歯に溝があり、それが毒の通り道だったのではないかと考えられているため、「毒を持つ恐竜」は完全なフィクションとは言い切れない面もあります。

Sebastian Josephus Odenbacker, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
歯と食性
ディロフォサウルスの歯は、典型的な肉食恐竜の特徴を持っています。
ただし、頭骨の構造を見ると、上あごの前歯と奥歯の間(人間でいう犬歯のあたり)に隙間があります。
これは現代のワニなどにも見られる特徴で、小動物をくわえて位置を調整するのに役立ったと考えられています。
このような歯とあごの構造から、ディロフォサウルスは主に小動物を食べていた可能性が高いとされています。
大型の獲物を仕留めるほどの噛む力は強くなかったため、すばやく動いて小型の獲物を追いかけたり、他の動物が残した獲物を横取りしたりしていたと推測されています。

Sebastian Bergmann from Siegburg, Germany, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
シノサウルスとの関係
ディロフォサウルスの研究の中で混乱を招いた恐竜のひとつに、「シノサウルス(Sinosaurus)」があります。
シノサウルスは中国で発見されたジュラ紀前期の肉食恐竜で、一時期はディロフォサウルスと同じ属に分類され、「ディロフォサウルス・シネンシス(Dilophosaurus sinensis)」と呼ばれていたこともありました。
これは、両者が2枚のトサカを持っていたことや、骨格の特徴が似ていたことが理由です。
しかし、詳しい骨の比較研究や、時代・地域の違いをふまえた分類の見直しが進められた結果、現在では別属(別の仲間)として「シノサウルス(=中国のトカゲ)」の名が使われています。
Ghedoghedo, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
このように、恐竜の分類は新しい化石の発見や研究の進展によって変わることがあり、かつて「同じ種類」と考えられていた恐竜が、後に「別の種類」として整理されることもよくあります。
研究史
名前の「ディロフォサウルス」は「2つのトサカをもつトカゲ」という意味(ギリシャ語:di=2、lophos=トサカ、saurus=トカゲ)。
1942年に初めて記載され、当初は「メガロサウルス」の一種とされていましたが、後に独自の属として再分類されました。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- コエロフィシス類
-
ディロフォサウルス
- クリオロフォサウルス
- ケラトサウルス類
- テタヌラ類
- スピノサウルス科
- ティラノサウルス科
- 竜脚形類
- 獣脚類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類
子供の頃どこかでディロフォサウルスの化石を見た時に、あまりにも顔が(横方向に)薄っぺらくてびっくりしました。
図鑑ではほとんど横顔しか載ってないから「2枚のトサカ」もいまいちイメージできてませんでした。