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デイノケイルスは、長らく「巨大な謎の腕の持ち主」として恐竜ファンの間で語られてきた存在です。
歯がなく、くちばしがあり、背中が盛り上がり、異常に長い腕を持つ──そんなユニークな姿が、2010年代になってようやく明らかになりました。
謎の恐ろしい手
1965年、モンゴルのゴビ砂漠で長さ2.4mもある巨大な腕の化石が発見されました。

獣脚類(肉食恐竜の仲間)であることは分かりましたが、あまりにも腕が大きすぎたのです。
参考までに、全長13メートルのティラノサウルスの腕は約1メートルほど。単純計算すると、デイノケイルスは全長30メートルを超える超巨大肉食恐竜ということになってしまいます。
さすがにそれは現実的ではなく、正体不明の恐竜として「デイノケイルス・ミリフィクス」と名付けられました。
- デイノ(Deino)= 恐ろしい
- ケイルス(cheirus)= 手
- ミリフィクス(mirificus)= 変わった、不思議な
という意味です。
その後、「オルニトミムスやガリミムスの仲間では?」という説も出ましたが、決定的な化石が見つからず、謎のまま時が流れました。
本当の姿が明らかに
それから約50年後の2006〜2009年、ついに新たなデイノケイルスの化石が発見されました。しかし、発掘現場は何者かに荒らされた(盗掘)後だったのです。
人気のある(高く売れる)頭骨や手足だけが持ち去られ、残りは捨てられていました。研究者たちは盗掘された化石の行方を追い、ヨーロッパの化石コレクターが頭骨と前肢を所有していることを突き止めます。
こうして全身の骨格が揃い、2014年にデイノケイルスの正体がついに明らかになりました。

ケラトプスユウタ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
確かに体は大きいですが、特に腕が異様に長く、背中は盛り上がり、顔はアヒル口。
こんな姿、全身の骨が見つからないと想像できませんよねw
食性
全身化石の解析により、デイノケイルスは雑食性だった可能性が高いことが分かってきました。
- くちばしの形状:歯はなく、幅広いアヒルのようなくちばしを持っており、水辺や陸上で植物や小動物をすくい取るのに適していました。
- 胃の内容物:化石からは魚のうろこや植物の種子・繊維が見つかっており、水生生物と植物の両方を食べていたことが示されています。
- 胴体の構造:広く膨らんだ腹部は、大量の植物を発酵・消化するための「発酵室」を備えていた可能性があり、草食動物的な特徴も持っていました。
- 前肢と爪の用途:非常に長い腕と鉤爪は、獲物を捕らえるというよりも、植物を引き寄せたり、川底を掘って餌を探すために使われていたと考えられています。
これらの特徴から、デイノケイルスは水辺で水生植物や魚、小型の無脊椎動物を捕食し、陸上では低木の葉や種子を食べるなど、環境に応じて多様な食物資源を利用する柔軟な食性を持っていたと考えられています。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- ケラトサウルス類
- テタヌラ類
- スピノサウルス科
- コエルロサウルス類
- ティラノサウルス科
- マニラプトル類
- オルニトミモサウルス類
- オルニトミムス科
- ガルディミムス科
- デイノケイルス科
-
デイノケイルス
-
- 竜脚形類
- 獣脚類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類