
巨大肉食恐竜といえばティラノサウルスが有名ですが、それに匹敵するサイズを誇るのが南米の「ギガノトサウルス」です。
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』にも登場し、ティラノサウルスとの対決シーンで話題を呼びました。
その名の通り「巨大なトカゲ」という迫力満点の存在です。

白亜紀の王者たち
ギガノトサウルスは一見するとティラノサウルスに似ていますが、実は「カルカロドントサウルス科」というまったく別のグループに属しています。
恐竜時代の末期「白亜紀」には、地域ごとに異なる“王族”たちが存在していました。
北半球では「ティラノサウルス科」が支配的で、ティラノサウルス・レックスをはじめとするこのグループは、非常に強力な咬む力と太く頑丈な骨格を持ち、大型の草食恐竜を仕留めるのに適していました。
彼らは白亜紀後期に登場し、最も進化した捕食者の一つとされています。


一方そのころ、南半球では「アベリサウルス科」が広く分布していました。
このグループにはカルノタウルスのような恐竜が含まれ、極端に短い前足と、頭部に角や突起を持つ独特な姿が特徴です。
俊敏な動きと鋭い視覚を活かして狩りをしていたと考えられています。


ギガノトサウルスが属する「カルカロドントサウルス科」は、アロサウルスの子孫にあたるグループで、アベリサウルス科より少し早い時期に南半球で繁栄しました。
細長い頭部と鋭い歯を持ち、肉を切り裂くのに適した構造をしており、近縁種マプサウルスの化石が集団で発見されていることから、群れで狩りをしていた可能性もあります。


さらに、アフリカを中心に分布していた「スピノサウルス科」は、他の肉食恐竜とは異なり、水辺の環境に適応した魚食性の恐竜です。
スピノサウルスは細長いワニのような顔と円錐形の歯を持ち、水中でも活動できたとされ、魚や水辺の生物を主に捕食していたと考えられています。


このように、白亜紀には地域ごとに異なる進化を遂げた肉食恐竜たちが、それぞれの環境で頂点に立っていたのです。
ティラノサウルスとの違い
ギガノトサウルスとティラノサウルスは、どちらも史上最大級の肉食恐竜として知られていますが、その生態や身体構造には大きな違いがあります。
🏋️♂️ 体格の違い
ギガノトサウルスの体長は約13メートルとティラノサウルスと同等ですが、より細身の体つきで、体重は約6〜8トンと推定されています。
一方、ティラノサウルスは骨格が太く、体重も約8〜9トンと重く、がっしりとした印象です。

🧠 頭部の構造
ギガノトサウルスの頭蓋骨は細長く、ナイフのような薄い歯で肉を切り裂くのに適していました。
対してティラノサウルスは、太く短い顎と非常に強力な咬合力を持ち、骨ごと粉砕できる歯を備えていました。
咬合力ではティラノサウルスが圧倒的に上です。

Sukram-C from Espoo, Finland, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

user:Eqdoktor, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
🏃♂️ 移動能力
ギガノトサウルスは長い脚と比較的軽い体重により、時速50キロ前後で走れた可能性があります。
ティラノサウルスは重い体重を支えるため安定性は高いものの、最高速度は時速20〜40キロ程度と見積もられています(諸説あり)。
🐾 狩猟スタイル
ギガノトサウルスは複数個体の化石が同一地点で発見されており、群れで狩りをしていた可能性が示唆されています。
対照的にティラノサウルスは基本的に単独で行動し、時には腐肉も食べていたと考えられています。

どちらが優れているというわけではなく、それぞれの恐竜が生息地や獲物に合わせて最適な形に進化しました。
ティラノサウルスは、エドモントサウルスやトリケラトプスなどの中型〜大型草食恐竜を狩るため、強力な咬合力が必要でした。
一方、ギガノトサウルスは、アルゼンチノサウルスのような超巨大な竜脚類をターゲットにしていた可能性があり、広く口を開いて深い傷を与える構造が適していたのです。
研究史
ギガノトサウルスの名前は、「巨大なトカゲ(Giga=巨大、Notos=南、Saurus=トカゲ)」を意味し、1990年代にアルゼンチンで発見されました。
その大きさから「ティラノサウルスより大きい恐竜」として注目を集めましたが、現在ではサイズはほぼ同等か、やや小さいという説が主流です。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- ケラトサウルス類
- アベリサウルス科
- テタヌラ類
- ティラノサウルス科
- スピノサウルス科
- アロサウルス科
- カルカロドントサウルス科
- カルカロドントサウルス
- マプサウルス
-
ギガノトサウルス
- ケラトサウルス類
- 竜脚形類
- 獣脚類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類
ジュラシックワールドでは背中が盛り上がって、背びれのようになったデザインで登場したギガノトサウルス。
今のところギガノトサウルスに背びれがあった証拠はありませんが、個人的にはティラノと差別化できててカッコいいなと思ってます。
恐竜っていうのは、我々にとって「伝説の先輩」みたいな存在です。
そして伝説ってのは、語り継がれるうちに、尾ひれや背びれがついていくものです。