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ステゴサウルスの仲間でありながら、ブラキオサウルスのような竜脚類を思わせる驚くほど長い首を持つ、非常にユニークな剣竜です。
従来の「剣竜は低い位置の植物を食べる」という常識を覆し、ジュラ紀の生態系における新たな可能性を示してくれます。
長い首
ミラガイアの最も際立った特徴は、体の約3割を占める長い首です。
この首は、17個以上の頸椎(首の骨)で構成されており、一般的な剣竜類の10個前後と比べても圧倒的に多く、竜脚類にも匹敵するほどです。
剣竜の代表であるステゴサウルスは、前足が短く後ろ脚が長いため、顔の位置が自然と低くなり、地面近くの植物を食べるのに適した体型をしています。
他の剣竜も同様に、低い位置の植物を食べると考えられてきました。
しかし、ミラガイアの登場により、剣竜類の中にも首を長く伸ばすという、全く異なる進化の道を選んだグループがいたことが明らかになりました。
どうやって首を伸ばした?
研究によると、ミラガイアの首の長さは、胸椎(胸の骨)の一部が頸椎へと変化したことによって実現されたとされています。
我々脊椎動物の「背骨」は、正式には「脊椎(せきつい)」と言います。
そして脊椎は、「ここからここまでが首」「ここまでが胸」のように分類されます。
分類のしかたはおおよそ次の通りです。
| 通称 | 名称 | 位置 |
|---|---|---|
| 首 | 頸椎(けいつい) | 肋骨より頭側 |
| 胸 | 胸椎(きょうつい) | 肋骨がある部分 |
| 腹・腰 | 腰椎(ようつい) | 胃や腸がある部分 |
| お尻 | 仙椎(せんつい) | 骨盤とくっついている |
| 尾 | 尾椎(びつい) | 骨盤以降 |
ミラガイアは、頭側の肋骨を退化させることで、相対的に首の骨を増やし、長くしたと考えられています。
この方法は、実はブラキオサウルスなどの竜脚類が首を長くした進化の仕組みと同じなのです。
剣竜の新しい仲間
ミラガイアは、同じくヨーロッパで発見された剣竜ダケントルルスと近縁で、「ダケントルルス亜科」に分類されています。
ダケントルルスと同様に、ミラガイアも尾に「サゴマイザー」と呼ばれるトゲ状の武器を持っていたとされますが、化石が部分的なため、尾のトゲの正確な形状や背中のプレートについてはまだ完全には判明していません。
それでも、ミラガイアの発見は、ヨーロッパにおける剣竜類の多様性を示す重要な証拠となっており、ジュラ紀後期のポルトガル周辺がさまざまなタイプの剣竜が共存する豊かな環境だったことを教えてくれます。
また、ミラガイアはヨーロッパで頭骨が発見された数少ない剣竜類としても知られており、その形態の研究に大きく貢献しています。
研究史
「ミラガイア」という名前は、化石が発見されたポルトガルのポルト・ミラガイア地区に由来しています。
また、「ガイア」はギリシャ神話に登場する地球の女神であり、学名には「素晴らしき地球」という意味が込められています。
最初の化石は2009年、ポルトガル人の古生物学者オクタビオ・マテウスによって記載されました。
この発見は、剣竜類の進化に対する見方を大きく変えるものであり、その後の研究に大きな影響を与えました。
ミラガイアの標本は、現在ポルトガル・リスボンのロウリニャン博物館に所蔵されています。
剣竜類の常識覆したその姿は、恐竜の進化にはまだ未知の可能性がたくさん残されていることを私たちに教えてくれます。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- 竜脚形類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- ファヤンゴサウルス科
- ステゴサウルス科
- ステゴサウルス亜科
- ステゴサウルス
- ヘスペロサウルス
- ダケントルルス亜科
- ダケントルルス
-
ミラガイア
- ケントロサウルス
- ステゴサウルス亜科
- 曲竜類
- 剣竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類
