ナノティラヌス

ナノティラヌス

Nanotyrannus
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  • 🏷️種 lancensis(ランケンシス)、lethaeus(レサエウス)
  • 🕰️時代 白亜紀後期(約6,800万〜6,600万年前)
  • 🌏発見地 北アメリカ(モンタナ州など)
  • 📐全長 約5〜6メートル

「小さな暴君」という意味の名前を持つナノティラヌスは、ティラノサウルスにそっくりな姿をしています。
新種の小型肉食恐竜なのか?  それとも、あのティラノサウルスの子どもなのか?
その正体をめぐって長年論争が続いてきました。

それぞれの説の根拠を見ていきましょう。

ナノティラヌス の画像

ティラノサウルスの子供とする根拠

骨の成長線

化石の骨組織を顕微鏡で観察すると、ナノティラヌスとされる標本の骨には活発な成長を示す線があり、成体ではなく成長途中の個体であることが示唆されています。
つまり小さい恐竜なのではなく、これからティラノサウルスのように大きくなる途中で命を落としたということです。

脳の構造

CTスキャンによる分析では、ナノティラヌスの頭骨内部構造(神経や感覚器官の配置)がティラノサウルスの若い個体とほぼ同一の発達段階を示すことが確認されています

成長段階の差

ナノティラヌスとティラノサウルスの骨格にはいくつかの違いがありますが、ヒヨコ🐤とニワトリ🐓の姿が異なるように、成長段階の違いとして説明できる範囲との判断です。

【ナノティラヌス「ジェーン」】
Tim Evanson from Cleveland Heights, Ohio, USA, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

独立種とする根拠

歯の本数と形状

ティラノサウルスの歯は太く少ないのに対し、ナノティラヌスは細く鋭利で本数が多い。
成長で歯の数が大きく減る例はほとんどないため、別種と考えられます。

地層の違い

ナノティラヌスの化石は、ティラノサウルスよりも古い地層から見つかる傾向があります。

成長停止線

「ジェーン」と愛称をつけられたナノティラヌスの代表的な標本の骨組織には「成長停止線(骨の断面に木の年輪のような模様があり、その間隔が狭まったもの)」が多数あり、ほぼ成体に達していた可能性があると報告されています。

【ナノティラヌス「ジェーン」の下あご】
Tim Evanson from Cleveland Heights, Ohio, USA, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

決着!?

そして2025年10月、とても説得力のある研究結果が発表されました 。  

研究チームは、奇跡的に保存された化石標本を分析し、ナノティラヌスがティラノサウルスとは明確に異なる独立した属であることを証明しました 。

研究の最大の決め手となったのは、「決闘する恐竜(Dueling Dinosaurs)」として知られる化石標本です 。この標本には、トリケラトプスと絡み合った完全な状態(98%以上)のナノティラヌスの骨格が含まれていて、詳細な分析を可能にしました 。  

【Dueling Dinosaurs(デュエリング・ダイナソー)】
Geekgecko, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

研究者たちは、この標本がT・レックスの幼体ではないことを、主に次の二つの決定的な証拠で証明しました。

成長の停止

標本は死亡時約20歳でしたが、骨の成長輪分析の結果、その成長速度が著しく減速し、肉体的に成熟段階に達していたことが判明しました 。
最終的に8トンを超えるティラノサウルスの幼体であれば、20歳は成長期にあるはずであり、この成長パターンは生物学的に矛盾しています 。

成長では変わらない「固定形質」

ナノティラヌスは、成長では変化しない固有の形態的特徴を持っていました 。
具体的には「頭骨の神経パターン」「副鼻腔(鼻の構造)」「より多い歯」「前肢が相対的に長い」「尾椎の数の違い」などです。
これらの特徴は、恐竜が成長のごく初期段階で決定されるため、この標本がどれだけ成長してもティラノサウルスになることはあり得ないと主張されています。

第2の種

また、この研究は、これまで「ティラノサウルスのティーンエイジャー」として世界的に有名だった化石「ジェーン」についても再評価しました。その結果、ジェーン標本がナノティラヌスであることは間違いありませんが、決闘する恐竜の標本「ナノティラヌス・ランケンシス(lancensis)」とはわずかに異なる特徴を持つことが判明し、「ナノティラヌス・レサエウス(lethaeus)」という新しい種として命名されました 。

ティラノサウルスの研究にも影響

これまでの学説では、ティラノサウルスは若い頃はすばしっこい小型の獲物を捕食し、大人になると大型の獲物を狩ることで、当時の肉食恐竜のニッチを独占し、他の捕食者を締め出していたと考えられていました 。

しかし、ナノティラヌスという独立した中型捕食者が存在したことにより、ティラノサウルスは「無競争で君臨していたわけではない」ことが明らかになりました 。

はたして若い頃のティラノサウルがどんな生活をしていたのでしょうか・・・

【ティラノサウルスとナノティラヌス】

研究史

ナノティラヌスの最初の化石は1942年にアメリカのモンタナ州で発見されましたが、当時は「小さめの肉食恐竜」ということしかわからず、正確な分類はされませんでした。

1946年、アメリカの古生物学者チャールズ・ギルモアが、この頭骨を「新種のゴルゴサウルス属」とし、ゴルゴサウルス・ランケンシスと命名。

【チャールズ・ギルモア】
National Photo Company Collection, Public domain, via Wikimedia Commons

さらに1988年。著名な古生物学者ロバート・バッカー達がこの頭骨を再調査し、「頭骨の特徴から、この化石はゴルゴサウルスではなく、独立した属に相当する」と結論づけました。 そして、新属新種「ナノティラヌス・ランケンシス」と命名したのです。

【ロバート・バッカー】
Ed Schipul from Houston, TX, US, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

大きさくらべ

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分類

恐竜

  • 竜盤目
    • 獣脚類
      • テタヌラ類
        • スピノサウルス科
        • ティラノサウルス科
          • ティラノサウルス
          • タルボサウルス
          • ナノティラヌス

    • 竜脚形類
  • 鳥盤目
    • 周飾頭類
      • 角竜類
      • 堅頭竜類
    • 装盾類
      • 剣竜類
      • 曲竜類
    • 鳥脚類

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