
パキケファロサウルスの最大の特徴は、まるでヘルメットのようなドーム状の頭骨。
体は比較的小さく、後ろ足で立って歩く二足歩行の草食恐竜でした。

頭骨
パキケファロサウルスの頭蓋骨は、頭頂部の骨の厚さが20〜25センチにも達します。
この姿から、昔から「同種のオス同士で頭突きをしていた」という説が有力視されてきました。
ただし、真正面からぶつかるには首や背骨の構造が不向きという意見もあり、「頭突き」ではなく「横からぶつけ合う」ような行動だったという研究もあります。
●「頭突きしていた説」の根拠
- 頭骨は分厚く、繊維骨の密度や血管の分布が衝撃を吸収する構造になっている
- 有限要素解析(物理的なシミュレーション)でも、衝撃が脳に到達する前に分散されることが確認されている
- 頭骨にはケガの跡が見つかっており、頭頂部に集中している
- 現生動物(ヒツジやウシなど)と構造が似ている部分がある
●「頭突きはしなかった説」の根拠
- 頭骨の繊維質や血管構造の分析から、「堅いけど脆い」可能性がある
- 頭が丸すぎて、頭同士をうまくぶつけるのが難しい
- 若い個体の頭は柔らかいことが分かってきた
- 頭は武器ではなく、トサカのような飾りだった可能性もある
彼らが本当に頭をぶつけ合っていたかどうかは、タイムマシンでもない限り分かりません。
それが古生物学の面白いところですね!
成長と分類の議論
「ドラコレックス(Dracorex)」や「スティギモロク(Stygimoloch)」という別種の恐竜が、
実はパキケファロサウルスの若い個体だったのではないかという説があります。
- ドラコレックス=「ドラゴンの王」
- スティギモロク=「地獄の角を持つ者」
どちらも角やトゲの多い頭骨が特徴です。
2000年代以降の研究で、これらの頭骨が未成熟な個体の特徴を示していることが判明。
成長するにつれてトゲが縮み、頭骨が分厚く丸くなり、最終的にパキケファロサウルスのようなドーム状の頭になるという説が有力です。
この説では
- ドラコレックス=幼体
- スティギモロク=亜成体
- パキケファロサウルス=成体
とされます。
ただし、頭骨の形状差が大きすぎるという理由で、別種とする意見も根強くあります。
化石が限られているため、今後の発見がこの論争を決着させるかもしれません。

何を食べていた?
パキケファロサウルスの歯は小さく、構造も単純で、特定の植物にこだわらず大量に食べていた可能性が高いと考えられています。
歯の形状や摩耗のパターンからは、食物を切断するよりもすり潰すことに適していたと推測されています。
また近年では、小動物や昆虫などをついばむ程度に食べていた可能性も指摘されており、完全な植物食だったかどうかについては、現在も議論が続いています。
研究史
名前の「パキケファロサウルス」は「厚い頭のトカゲ」(Pachy=厚い、cephalo=頭、saurus=トカゲ)という意味です。
1943年にアメリカで最初の頭骨が発見されて以来、厚頭類(パキケファロサウルス科)の代表種として知られています。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- 竜脚形類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- パキケファロサウルス科
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パキケファロサウルス
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- パキケファロサウルス科
- 装盾類
- 剣竜
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類