
パラサウロロフスは、ハドロサウルス類(いわゆる「カモノハシ竜」)に属する大型の植物食恐竜です。
最大の特徴は、後頭部から後方に長く伸びるトサカ。
この独特な形は一度見たら忘れられないインパクトがあり、恐竜を題材にした映画や絵本などにもよく登場しますね。

鳴き声
パラサウロロフスのトサカは、ただの飾りではありません。
その内部は空洞になっていて、まるで管楽器のように空気が通る複雑な構造をしていました。この構造を使って、低くて遠くまで響く音を出していたと考えられています。
実際に、復元された頭骨をもとにシミュレーションを行った結果、「フーン」という低周波の音が再現されました。これは、現代のゾウやクジラが発する“地響きのような低音”に似ています。

Jdistefano14, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
この鳴き声は、以下のような目的で使われていたと考えられています:
- 群れの仲間とのコミュニケーション
- 縄張りや異性へのアピール
- 危険の知らせや警戒音
- 親子の認識信号(子どもが親の声を覚えるため)
また、トサカの形や大きさには個体差や性差(オス・メスの違い)があり、音の高さや響きも個体ごとに違っていた可能性があります。
まるで“恐竜オーケストラ”のように、それぞれが独自の音を奏でていたのかもしれません。
ティラノサウルスに襲われた?
パラサウロロフスが生きていた白亜紀後期の北アメリカには、あのティラノサウルスがいました。少し前の図鑑などでは、パラサウロロフスがティラノサウルスの餌として描かれることもありました。
しかし、実際はパラサウロロフスがティラノサウルスに襲われることはなかったようです。
「白亜紀後期」とは、約1億年前から6600万年前にかけての時代を指します。
しかしその中で──
- パラサウロロフスが生きていたのは約7,600万〜7,300万年前
- ティラノサウルスが生きていたのは約6,800万〜6,600万年前
と考えられていて、この間には500万年ほどの開きがあります。
もちろん、まだ化石が発見されていないだけで、パラサウロロフスがさらに長く生き延びていた可能性もありますが、今のところ両者が顔を合わせる機会は無かったと考えられています。
ところで、「500万年」ってどのくらいの長さでしょうか?
恐竜が地球上に存在していた期間は約1億6,500万年。
それに比べると500万年は短く感じるかもしれませんが、実はとても長い時間です。
たとえば──
今から500万年前、人類(ホモ・サピエンス)はまだ誕生しておらず、チンパンジーのような姿でした。
そして、ほんの1万年前まで、私たちはマンモスと戦っていたのです。
そう考えると、恐竜は体の大きさだけでなく、時間のスケールでも圧倒的ですね!

研究史
パラサウロロフスは、1920年にカナダ・アルバータ州で最初に発見されました。
発見者はアメリカの古生物学者ウィリアム・パークスで、1922年に新属新種として命名・記載されました。
「パラサウロロフス」という名前は「サウロロフスに近いもの」という意味ですが、後の研究で、それほど近縁ではないことが判明しました。
ただし、どちらもハドロサウルス科に属する仲間です。
分類
恐竜
- 竜盤目
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- 鳥脚類
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- ヒプシロフォドン科
- ハドロサウルス科
- サウロロフス亜科
- ランベオサウルス亜科
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パラサウロロフス
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