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チンタオサウルスは、ハドロサウルス科(いわゆる「カモノハシ竜」)に属する大型の植物食恐竜です。
かつては、頭の上からユニコーンの角のように細長いトサカが垂直に伸びた姿で復元され、長い間その姿で親しまれてきました。
2013年に発表された研究によってトサカの形状が見直されましたが、今でも当時の復元の姿が好きだという人も多いでしょう。
トサカ
チンタオサウルスの化石は、比較的完全な骨格が発見されているものの、その最大の特徴であるトサカの復元については、長年にわたって論争が続きました。
化石が発見された後、最初期はユニコーンの角のように垂直に伸びた姿で復元されました。

Gary Todd, CC0, via Wikimedia Commons
余談ですが、こんな頭の形状で「チンタオ」なんて名前なので、当時の男子小学生たちに変な人気がありました。
(そこまで有名ではありませんでしたが)
しかし、その後の研究で、「トサカは化石化の途中で鼻骨がたまたま折れ曲がったように見えているだけで、実際にはトサカは存在しなかったのではないか」という懐疑的な意見も浮上しました。
しかし、2013年に発表された再検討論文により、トサカ自体は確かに存在したとの結論が支持されました。
現在では、最初に見つかっていた頭骨はトサカの部分が破損していただけで、実際は板状のトサカだったと考えられています。
植物食のスペシャリスト
チンタオサウルスは、白亜紀後期に大繁栄したハドロサウルス科、通称「カモノハシ竜」の仲間です。その名の通り、彼らはアヒルのような平らで幅広い口先を持っていました。
この口で地面近くのシダや裸子植物といった大量の植物を効率よく刈り取って食べていました。
また、口の奥には数百本から数千本もの歯がびっしり並んだデンタルバッテリーと呼ばれる構造になっていて、硬い植物でも細かくすり潰すことができた、高度な植物食恐竜だったと言えます。
日本での展示
福島県広野町の町役場ロビーには、町のシンボルとして全長8メートルのチンタオサウルスの全身復元骨格が30年近く展示されていました。
しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生し、広野町も大きな被害を受けました。原発事故の影響で住民の避難が続くなか、町のシンボルであったチンタオサウルスの骨格も、地震の衝撃で頭骨が落下し、大きく壊れてしまいました。
元通りに直すには、すべてのパーツを取り換えるほどの大規模な修復が必要でした。しかし、町にはその余裕がなく、チンタオサウルスは壊れたまま……
震災から5年目を迎えようとするなか、この「首折れ恐竜」の窮状を知った古生物学者たちが立ち上がります。
群馬県立自然史博物館の長谷川善和・名誉館長らを中心とした専門家たちが集結し、「このままでは忍びない。なんとかしてやりたい」という思いから、復興支援プロジェクトとして修復が決定したのです。
この復元作業で重要なポイントとなったのが、その「姿」でした。
2013年頃から、チンタオサウルスのトサカは垂直ではなく、後方に傾いた板状だったという新しい復元説が学術的に主流になりつつありました。しかし、広野町では、垂直に伸びた角を持つ「ユニコーンのような姿」が、学校の壁画などに描かれ、長年住民にとって最もなじみ深い姿でした。
専門家たちは町と相談の上、学術的な正確さよりも「町民の思い出と絆」を優先し、住民になじみ深いトサカの形を変えずに修復することを決定しました。
修復を終えたチンタオサウルスは、2016年に国立科学博物館で開催された「恐竜博」でお披露目されました。
「恐竜の顔が近くなって、より親しみを感じられました」という広野町教育委員会担当者の言葉が示す通り、チンタオサウルスは、科学的な発見の対象であると同時に、町の復興と未来を見つめる、希望のシンボルとして、再び人々の前にその姿を現したのです。
研究史
チンタオサウルスは、1958年に中国で新属新種として命名されました。属名(チンタオサウルス)は、化石が発見された中国・山東省の青島(チンタオ)市にちなんで名付けられています。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- 竜脚形類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- ヘテロドントサウルス科
- 真鳥脚類
- ヒプシロフォドン科
- イグアノドン類
- イグアノドン科
- ハドロサウルス上科
- ハドロサウルス亜科
- ランベオサウルス亜科
- パラサウロロフス
-
チンタオサウルス
- 周飾頭類