
映画『ジュラシック・パーク』シリーズで一躍有名になったヴェロキラプトル。
すばやく動き、仲間と協力して獲物をしとめる知能的な捕食者として描かれ、「こわいけどカッコいい!」という印象を多くの人に残しました。
ただし、映画で描かれた姿と、実際のヴェロキラプトルの姿には大きな違いがあります。

特徴と生態
ヴェロキラプトルは、鳥に近い恐竜のひとつで、全身が羽毛で覆われていたと考えられています。
体は小柄ながら非常に俊敏で、細く鋭い歯と、するどい鉤爪を持っていました。
特に、後ろ足の第2指(人差し指)にある大きく湾曲した鈎爪「シックル・クロー」が最大の特徴です。
脳が比較的大きく、視力も優れていたとされ、視覚を頼りに獲物を素早く追い詰めていたと考えられています。

Danny Cicchetti, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
闘争化石
ヴェロキラプトルの有名なエピソードのひとつに、「プロトケラトプスとの戦いの化石」があります。
これは、肉食のヴェロキラプトルと草食のプロトケラトプスが、まさに戦っている最中の姿で化石になったという、非常に貴重な発見です。
この化石では、ヴェロキラプトルが後ろ足のかぎ爪をプロトケラトプスのお腹に突き立て、
プロトケラトプスはそのアゴでヴェロキラプトルの腕をしっかりかんでいるという、まるで時間が止まったような状態で見つかりました。
両者が本気で戦っていたことがうかがえ、砂嵐などで急に土に埋もれたと考えられています。
この化石は「闘争化石(ファイティング・ダイナソーズ)」と呼ばれ、恐竜の暮らしや行動を知るうえで非常に貴重な資料です。
この発見から、ヴェロキラプトルが本当にかぎ爪を武器にしていたことや、
小型恐竜でも命がけの戦いをしていたことがよくわかります。

研究史
「ヴェロキラプトル」という名前は、ラテン語で「すばやい泥棒」という意味です。(“velox”=すばやい、“raptor”=ひったくり、捕る者)。
1923年、モンゴルのゴビ砂漠で初めて化石が発見されました。
映画『ジュラシック・パーク』に登場するヴェロキラプトルは、実はもっと大きな別の恐竜「ユタラプトル」に近い姿で描かれています。
本物のヴェロキラプトルは、七面鳥くらいの大きさで、羽毛を持つなど、実際の姿とはかなり異なっていました。
また、2000年代以降の研究で、「羽毛を持つ肉食恐竜」という事実が確定的になり、鳥とのつながりがより明らかになりました。
これは、恐竜の進化を考えるうえでも非常に重要な発見です。
分類
恐竜
- 竜盤目
- 獣脚類
- ケラトサウルス類
- テタヌラ類
- ティラノサウルス科
- スピノサウルス科
- ドロマエオサウルス科
- デイノニクス
-
ヴェロキラプトル
- 竜脚形類
- 獣脚類
- 鳥盤目
- 周飾頭類
- 角竜類
- 堅頭竜類
- 装盾類
- 剣竜類
- 曲竜類
- 鳥脚類
- 周飾頭類