イルカは哺乳類ですが、その姿は魚にそっくりです。
これは、海の中で生活するために最適な形に進化した結果、魚と似た姿になったということです。

こちらは「モグラ」と「ケラ(オケラ)」の手の写真です。

*2 George Chernilevsky, Public domain, via Wikimedia Commons
哺乳類と昆虫というまったく異なる生物ですが、土を掘るための手の形は驚くほど似ています。
このように、異なる生物が同じような環境に適応することで、似た形態に進化する現象を「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼びます。
生物学では、「形が似ているから近縁だと思ったら、実は他人の空似だった!」ということがあり、研究者を悩ませることもあるそうです。
🐭収斂の例①(哺乳類)
「有袋類」をご存じでしょうか。
カンガルーやコアラのように、お腹のポケットで子どもを育てる動物のグループです。
この仲間に「フクロネズミ」や「フクロモモンガ」などがいます。

Inconnu(e), CC0, via Wikimedia Commons
彼らは、ネズミやモモンガが袋を進化させて誕生したわけはありません。
逆にフクロモモンガの袋が退化したのがモモンガなわけでもありません。
ネズミやモモンガは「げっ歯類」、フクロネズミやフクロモモンガは「有袋類」と、まったく別のグループに属しています。
それぞれが、似たような環境に適応する中で、たまたま似た姿に進化したのです。
有袋類には他にも「フクロモグラ」「フクロアリクイ」「フクロオオカミ」などがいますが、どれも同じような収斂進化の例です。
SFの物語で「第二の地球に行ったら、そこには自分そっくりの人物がいた」なんてシチュエーションがありますが、それと同じですね。
🎨収斂の例②(色・模様)
収斂は「形状」だけに起こるものではありません。
たとえば、お腹が白い動物ってたくさんいますよね?

*2 Σ64, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
*3 Andrea Westmoreland from DeLand, United States, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
*4 de:Benutzer:Frank Dickert, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
哺乳類、爬虫類、両生類、魚……さまざまなグループに見られます。
これは「カウンターシェーディング」と呼ばれる現象で、背中側を濃く、腹側を淡くすることで、太陽光による陰影を打ち消し、体の立体感を減らして目立たなくする効果があります。
このカラーパターンは、特定の生物から受け継いだものではなく、多くの生物がそれぞれの進化の中で繰り返し獲得したものです。つまり、この体色を持つことで生き残りやすくなったということですね。
特に、上下の明るさの差が大きい海の中ではこの特徴が顕著で、イルカやサメは背中が黒く、お腹が白い体色をしています。
☕収斂の例③(植物)
収斂進化は動物だけでなく、植物にも見られます。
たとえば「コーヒー」「お茶」「カカオ」。
これらはまったく別の植物ですが、どれもカフェインを含んでいます。
これらの植物はカフェインを持つ共通の祖先から分かれたわけではなく、それぞれが独立してカフェインという物質を生み出すように進化したのです。

Nana Pearls, CC0, via Wikimedia Commons
カフェインは、葉を食べる虫や周囲の植物に対する“毒”として働きます。
つまり、生き残るために似たような戦略を取った結果、同じ成分を持つようになったというわけです。
🦖収斂の例4(恐竜)
恐竜の中にも、収斂進化の例がいくつも見られます。
たとえば、トリケラトプスのような角竜と、パラサウロロフスのようなハドロサウルス類(カモノハシ竜)は、どちらも「くちばし」を持っています。
これは、当時登場した硬い葉の植物を食べるのに適した形です。

また、両者は「デンタルバッテリー」と呼ばれる、すり減ってもすぐに生え変わる歯を進化させており、これも収斂進化の一例です。
テリジノサウルスは、本来肉食である獣脚類の一種ですが、植物食に転じたことで、高い位置の葉を食べるために首が長く進化しました。
これは、ブラキオサウルスなどの竜脚類とよく似ています。

最後に、「スピノサウルス」と「オウラノサウルス」を見比べてみてください。

スピノサウルスはご存じの通り肉食(魚食)恐竜、オウラノサウルスはイグアノドンの仲間の植物食です。
でも、なんかもう……全体的にそっくりで、親子のようですね!
まさに、収斂進化による“他人の空似”です。