ボーンベッド

恐竜の化石が発見される場所の中には、「ボーンベッド(Bonebed)」と呼ばれる特別な地層があります。
これは、大量の恐竜の骨が一か所に集まって埋まっている場所で、まるで“化石の墓場”のような光景です。

中には、同じ種類の恐竜が何十体、時には何百体も一緒に見つかることもあり、古生物学者にとっては非常に貴重な研究対象となっています。


🪦なぜボーンベッドができるのか

ボーンベッドが形成される理由には、いくつかの自然現象が関係していると考えられています。

たとえば、干ばつの際に水を求めて多くの恐竜が集まったものの、十分な水が得られず、その場で命を落とした可能性があります。

また、火山の噴火や洪水などの災害によって、恐竜が一斉に死亡し、土砂や火山灰に埋もれて化石として残ったケースもあるでしょう。こうした状況では、短期間に多くの個体が埋まるため、骨が良好な状態で保存されやすくなります。


🔎ボーンベッドからわかること

ボーンベッドの分析によって、恐竜の生態や行動についてさまざまなことが明らかになります。

異なる種類の化石が混ざっていれば、それらの恐竜が同じ時代・地域で共存していたことが分かりますし、同じ種類の恐竜がまとまって見つかれば、群れで生活していた可能性や、子育て行動の痕跡が見えてくることもあります。
特に、幼体から成体までの個体が混在している場合は、成長過程の研究にとって非常に有益です。

ただし、洪水などで偶然死体が1か所に集まっただけの可能性もあるため、まとまって見つかったからと言って必ず群れで行動していたとは限りません。地層の様子や骨の並び方など、さまざまな証拠を慎重に調べる必要があります。

それでも、ボーンベッドから得られる情報は、恐竜の生態系や進化の理解を深めるうえで、非常に重要なものとされています。


🦴ボーンベッドの例

ディノボーンベッド(Dinosaur National Monument)

1909年にアメリカで発見されたジュラ紀後期の有名なボーンベッド。
アロサウルス、ステゴサウルス、アパトサウルス、カマラサウルスなどの化石が大量に含まれています。

洪水によって骨が川底に集積したと考えられており、岩壁に化石が露出した状態で観光客にも公開されています。

【展示の様子】
Daniel Schwen, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

エッグマウンテン(Egg Mountain)

アメリカで発見された、マイアサウラとその幼体の化石が密集したボーンベッド。
恐竜の繁殖・成長・子育て行動を研究するうえで最も重要な化石産地のひとつです。

特に、巣の状態で幼体の化石が大量に見つかったことは、恐竜が親によって子育てされていたことを示す決定的な証拠とされています。

【マイアサウラ】
Fernando Losada Rodríguez, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ホイットカー採石場(Whitaker Quarry)

コエロフィシスの完全な骨格から部分的なものまで、数百体の個体が良好な状態で保存されています。
捕食や風化の痕跡が少なく、洪水によって形成されたと考えられています。

このボーンベッドからは、成長過程・性差・病理・摂食行動・運動能力・視覚特性など、コエロフィシスの生態が詳細に研究されています。

【コエロフィシスの複数の骨】
Paleeoguy, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons